57項目と80項目のストレスチェック調査票の違いとは?
NEWS
50人以上の事業所では、年に1回以上のストレスチェックが義務づけられています。
しかし、利用可能な「ストレスチェック調査票」には複数の種類があり、どの票を選択すれば良いのか、各調査票の特性や違いを正確に理解するのは難しいかもしれません。
そこで、本記事では、利用されることの多い57項目の調査票と、最近採用が増えてきている80項目の調査票について、それぞれの特徴や違い、メリットなどについて解説します。
ストレスチェック調査票に必須の3領域
ストレスチェック調査票には、「心身のストレス反応」、「仕事のストレス要因」、そして「周囲のサポート」の3つの領域を必ず取り入れる必要があります。さらに、選択する項目は科学的な根拠を基にすることが求められています。
項目 | 内容 |
---|---|
仕事のストレス要因 | 職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目 |
心身のストレス反応 | 心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目 |
周囲のサポート | 職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目 |
ご紹介する57項目と80項目の調査票は、上述の3つの領域をそれぞれカバーしています。
なお、調査票の項目は、各事業場の判断で選べますが、ストレスチェックの主目的は精神疾患を持つ労働者を特定することではないという点を念頭に置いておきましょう。
そのため、「性格検査」「希死念慮」「うつ病検査」といった項目を調査票に取り入れることは不適当であるとされていますのでご注意ください。
それでは、57項目と80項目のストレスチェック調査票の詳細を見ていきましょう。
職業性ストレス簡易調査票(57項目)の特徴
57項目の調査票は、厚生労働省が推奨している調査票です。
<詳細>:【厚労省推奨】職業性ストレス簡易調査票(57項目)
57項目の調査票は、ストレスチェックに必要な3領域(仕事のストレス要因、心身のストレス反応、周囲のサポート)をすべて網羅しており、従業員のストレス状況を概観的に把握するのに適しています。
また、3つの領域を評価することで、企業全体のストレス状況を把握し、大まかな改善策を策定することができます。
一方で、具体的な要因や特定のストレス反応を把握するにはやや物足りない内容となっています。
57項目の調査票
A.あなたの仕事についてうかがいます(回答:そうだ・まあそうだ・ややちがう・ちがう) | |
1 | 非常にたくさんの仕事をしなければならない |
2 | 時間内に仕事が処理しきれない |
3 | 一生懸命働かなければならない |
4 | かなり注意を集中する必要がある |
5 | 高度の知識や技術が必要なむずかしい仕事だ |
6 | 勤務時間中はいつも仕事のことを考えていなければならない |
7 | からだを大変よく使う仕事だ |
8 | 自分のペースで仕事ができる |
9 | 自分で仕事の順番・やり方を決めることができる |
10 | 職場の仕事の方針に自分の意見を反映できる |
11 | 自分の技能や知識を仕事で使うことが少ない |
12 | 私の部署内で意見のくい違いがある |
13 | 私の部署と他の部署とはうまが合わない |
14 | 私の職場の雰囲気は友好的である |
15 | 私の職場の作業環境(騒音、照明、温度、換気など)はよくない |
16 | 仕事の内容は自分にあっている |
17 | 働きがいのある仕事だ- |
B.最近 1 か月間のあなたの状態についてうかがいます(回答:ほとんどなかった・ ときどあきった・しばしあばった・ほとんどいつもあった) | |
18 | 活気がわいてくる |
19 | 元気がいっぱいだ |
20 | 生き生きする |
21 | 怒りを感じる |
22 | 内心腹立たしい |
23 | イライラしている |
24 | ひどく疲れた |
25 | へとへとだ |
26 | だるい |
27 | 気がはりつめている |
28 | 不安だ |
29 | 落着かない |
30 | ゆううつだ |
31 | 何をするのも面倒だ |
32 | 物事に集中できない |
33 | 気分が晴れない |
34 | 仕事が手につかない |
35 | 悲しいと感じる |
36 | めまいがする |
37 | 体のふしぶしが痛む |
38 | 頭が重かったり頭痛がする |
39 | 首筋や肩がこる |
40 | 腰が痛い |
41 | 目が疲れる |
42 | 動悸や息切れがする |
43 | 胃腸の具合が悪い |
44 | 食欲がない |
45 | 便秘や下痢をする |
46 | よく眠れない |
C.あなたの周りの方々についてうかがいます(回答:非常に・かなり・多少・全くない) | |
・次の人たちはどのくらい気軽に話ができますか? | |
47 | 上司 |
48 | 職場の同僚 |
49 | 配偶者、家族、友人等 |
・あなたが困った時、次の人たちはどのくらい頼りになりますか? | |
50 | 上司 |
51 | 職場の同僚 |
52 | 配偶者、家族、友人等- |
・あなたの個人的な問題を相談したら、次の人たちはどのくらいきいてくれますか? | |
53 | 上司 |
54 | 職場の同僚 |
55 | 配偶者、家族、友人等 |
D.満足度についてうかがいます(回答:満足・まあ満足・やや不満足・不満足) | |
56 | 仕事に満足だ |
57 | 家庭生活に満足だ |
新職業性ストレス簡易調査票(80項目)の特徴と57項目との違い
続いて、新職業性ストレス簡易調査票(80項目)の内容と、57項目との主な違いについて解説します。
<詳細>:新職業性ストレス簡易調査票(80項目)
80項目の調査票は、57項目に以下の項目を追加して構成されています。
- 働きがい(ワークエンゲージメント)
- ハラスメント
- 上司のマネジメント
- 人事評価
80項目の調査票では、職場の活気や、特定の職務要因がどれほどストレスを引き起こしているのか、また従業員がどのような反応を示しているかなどをより詳細に把握することができます。
また、57項目版に比べ、集団分析をもとにした職場改善策の検討がより行いやすくなっているのも、この80項目版の特長として挙げられます。
80項目の調査票(追加項目のみ)
E.あなた自身のお仕事について、もう少し詳しくうかがいます(回答:そうだ・まあそうだ・ややちがう・ちがう) | |
58 | 感情面で負担になる仕事だ |
59 | 複数の人からお互いに矛盾したことを要求される |
60 | 自分の職務や責任が何であるか分かっている |
61 | 仕事で自分の長所をのばす機会がある |
F.あなたが働いている職場についてうかがいます(回答:そうだ・まあそうだ・ややちがう・ちがう) | |
62 | 自分の仕事に見合う給料やボーナスをもらっている |
63 | 私は上司からふさわしい評価を受けている |
64 | 職を失う恐れがある |
65 | 上司は、部下が能力を伸ばす機会を持てるように、取り計らってくれる |
66 | 上司は誠実な態度で対応してくれる |
67 | 努力して仕事をすれば、ほめてもらえる |
68 | 失敗しても挽回(ばんかい)するチャンスがある職場だ- |
G.あなたの働いている会社や組織についてうかがいます(回答:そうだ・まあそうだ・ややちがう・ちがう) | |
69 | 経営層からの情報は信頼できる |
70 | 職場や仕事で変化があるときには、従業員の意見が聞かれている |
71 | 一人ひとりの価値観を大事にしてくれる職場だ |
72 | 人事評価の結果について十分な説明がなされている |
73 | 職場では、(正規、非正規、アルバイトなど)いろいろな立場の人が職場の一員として尊重されている |
74 | 意欲を引き出したり、キャリアに役立つ教育が行われている |
75 | 仕事のことを考えているため自分の生活を充実させられない |
76 | 仕事でエネルギーをもらうことで、自分の生活がさらに充実している |
H.あなたのお仕事の状況や成果についてうかがいます(回答:そうだ・まあそうだ・ややちがう・ちがう) | |
77 | 職場で自分がいじめにあっている (セクハラ、パワハラを含む) |
78 | 私たちの職場では、お互いに理解し認め合っている |
79 | 仕事をしていると、活力がみなぎるように感じる |
80 | 自分の仕事に誇りを感じる |
80項目版ストレスチェック調査票のメリットと注意点
厚生労働省は「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」を推奨していますが、集団分析を基に職場の改善を検討する際に「新職業性ストレス簡易調査票(80項目)」を採用する企業が増えてきています。
そこで、80項目の調査票を採用する際の主要なメリットと注意点について、もう少し詳しく説明します。
ストレスチェック調査票80項目のメリット
メリット1:ストレス状況を深く理解できる
80項目の最大のメリットは、職場のストレス状況をより詳細に把握できることです。具体的な職務要因や個別の症状を特定することで、より効果的な改善策を策定できます。
メリット2:集団分析の精度向上
「働きがい」や「ハラスメント」、さらに「ワークエンゲージメント」などの情報を57項目版よりも多く取得できるため、集団分析の精度が向上します。
メリット3:ワーク・エンゲージメント向上に貢献
ストレスの低減はワーク・エンゲージメント(仕事への熱意、没頭、活力などの心理状態)を高める要因となります。この結果、企業の生産性が向上し、従業員は仕事を通じて生活の充実が期待できます。
ストレスチェック調査票80項目を採用する際の注意点
一方で、ストレスチェック調査票80項目を企業が適切に活用し、結果を最大限に利用するためにはいくつかの注意点も存在します。
注意点1:回答にかかる時間
80項目の調査票は57項目よりも詳細な項目が増えているため、回答には10〜15分程度(57項目は5〜10分程度)が必要となります。
注意点2:解析の難易度と活用
80項目調査票から得られる情報は非常に詳細です。そのため、結果を適切に解析し活用するには、専門の知識が必要です。自社での解析が難しい場合、80項目の調査票をサポートするストレスチェックサービスの利用を考えることも一つの選択肢となります。
まとめ:集団分析から職場環境の改善を
本記事では、57項目と80項目のストレスチェック調査票の違いについて解説しました。
57項目の調査票は、職場全体のストレス状況を大まかに理解し、基本的な改善方針を立てる際の参考となります。一方、80項目の調査票は、特定の問題やストレス要因をより深く探求できるツールとして、具体的な対策の策定に有効です。企業の実際の状況や必要に応じて、適切な調査票を選びましょう。
なお、どの調査票を選択するにせよ、最も重要なのは、その選択の背後にある目的が、問題や課題の早期発見および職場環境の向上であるということを意識することです。
集団分析の結果と日常の職場の観察を組み合わせることで、職場の課題を正確に識別し、更なる環境の改善に取り組むことが期待されます。
80項目版の調査票にも対応!企業・従業員の健康をサポートします
当社は、80項目版を含むストレスチェックの運営代行から、産業医・保健師の紹介、健康診断の運営、各種相談サービスまで、企業・従業員の健康をサポートするサービスを幅広く提供しています。
- 80項目版ストレスチェックの導入を検討しているが、どう活用するか迷っている
- ストレスチェックの業務負担を軽減したい
- 健康診断の事務業務に手がまわらない
- 長時間労働やメンタルヘルスに対応可能な産業医を選任したい
- 初めて実施するストレスチェックなので、何から始めたらいいかわからない
- 初めての産業医選任なので、何から始めればいいのかわからない…
など、ご質問やご不安な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
\電話:03‐6712‐8465/
\各サービスの紹介はこちら/