秋の人事異動での環境変化にご用心~変化の季節に、心の準備を~

※本内容は、2025年9月発行の「キャリコンLETTER」を参考に作成しております
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秋は気候の移り変わりとともに、企業内でも人事異動や組織再編が活発になる季節です。
新しい部署、新しい上司、新しい業務…。期待と不安が入り混じるこの時期は、働く人にとってはキャリアの節目であると同時に、心身のコンディションにも影響を与えやすいタイミングです。
人事異動は、個人の成長や組織の活性化を目的とした重要な施策ですが、環境の変化がもたらす心理的・身体的な負荷についても、企業として十分に配慮する必要があります。
特に、変化に対する「心の準備」が整っていない場合、本人のパフォーマンス低下だけでなく、職場全体の雰囲気や生産性にも影響を及ぼす可能性があります。
本記事では、環境変化に伴う影響と企業担当者ができる対策をご紹介します。
環境変化がもたらすメンタルへの影響
人事異動によって生じる変化は、単なる業務内容の変更にとどまりません。
以下のような影響が、働く人の心身に現れることがあります。
●人間関係の再構築による緊張感
新しい上司や同僚との関係づくりは、無意識のうちに心の負荷となり、ストレスの原因になります。
特に、これまで築いてきた信頼関係が一度リセットされるような感覚は、安心感の喪失につながります。
●生活リズムの乱れ
通勤時間や勤務時間の変化により、睡眠や食事のリズムが崩れ、体調不良や集中力の低下を招くことがあります。
これが慢性化すると、心身の不調へとつながるリスクが高まります。
●自分の価値や役割への迷い
異動によって「自分は必要とされているのか」「この方向でいいのか」といったキャリアの不安が生じることもあります。
特に、これまでの専門性が活かせない部署への異動は、自己肯定感の低下を招きやすくなります。
●孤立感の増加
新しい環境では、誰に相談すればよいか分からず、孤立感を感じることがあります。
これは、メンタルヘルスの悪化を加速させる要因の一つです。
メンタルへの影響をそのままにしておくとどうなる?
環境変化によるストレスを放置すると、以下のようなリスクが高まります。
●モチベーションの低下
自信喪失や自己否定感が強まり、業務への意欲が減退します。
これは、成果や評価にも直結するため、早期の対応が求められます。
●職場内コミュニケーションの悪化
孤立感や不信感が生まれ、チームワークに支障をきたすことがあります。
結果として、職場の雰囲気が悪化し、離職者の増加にもつながりかねません。
●心身の不調
睡眠障害、食欲不振、頭痛、倦怠感など、身体症状として現れることもあります。
これが長期化すると、うつ病や適応障害などの診断に至るケースもあります。
●離職リスクの増加
長期的な不調が続くと、退職や休職につながるケースも少なくありません。
特に、異動後半年以内の離職率が高い企業では、環境変化への対応が急務です。
環境変化への対応策
変化に適応するためには、個人ができる工夫と、企業側の支援が両輪となることが重要です。
以下は、働く人が実践できる対策です。
1.小さな成功体験を積み重ねる
「できないこと」ではなく「できたこと」に目を向けることで、自己肯定感が高まり、前向きな気持ちを維持できます。
たとえば、初めての業務で「報告書を期限内に提出できた」「新しい同僚と会話できた」といった小さな達成を意識することが大切です。
2.周囲に頼る・話す
上司や同僚に気持ちを話すことで、心の整理ができ、孤立感を防ぐことができます。
相談するのは迷惑かも」と思わず、気軽に話せる環境づくりが重要です。
3.生活リズムを整える
睡眠・食事・運動の基本を見直し、特に朝の光を浴びる習慣は、気分の安定に効果的です。
朝の散歩や軽いストレッチなど、無理なく続けられる習慣を取り入れましょう。
4.必要に応じて専門的な支援を活用する
不調が長引く場合は、社内相談窓口や外部の専門機関の利用を検討しましょう
キャリアコンサルタントや産業カウンセラーとの面談は、客観的な視点からの助言が得られ、安心感につながります。
企業担当者ができることは
人事・管理部門の担当者ができる支援は、以下のようなものがあります。
◇異動前後のフォロー面談の実施
異動者の不安や疑問を事前に把握し、適切な情報提供やサポートを行うことで安心感を与えます。
たとえば、初めての業務で「報告書を期限内に提出できた」「新しい同僚と会話できた」といった小さな達成を意識することが大切です。
◇メンタルヘルス研修の導入
ストレス対処法やセルフケアの知識を共有することで、社員の自己管理力を高めます。
特に、異動直後のタイミングで実施することで、予防的な効果が期待できます。
◇相談しやすい職場づくり
上司や人事担当者が「話しやすい存在」であることが、早期の問題発見と対応につながります。
定期的な1on1ミーティングや、匿名での相談窓口の設置も有効です。
◇外部支援機関との連携
社外のキャリアコンサルタントや産業カウンセラーとの連携により、専門的な支援を提供できます。
特に、社内では話しづらい悩みを外部で相談できる体制は、社員の安心感につながります。
最後に
秋の人事異動は、企業にとっても個人にとっても大きな転機です。
環境の変化に伴う心の揺らぎを「当然のこと」として受け止め、早めの対応を心がけることで、社員のキャリアと健康を守ることができます。
企業としても、変化の季節にこそ「人を支える力」が問われます。
人事異動を単なる配置転換ではなく、「人の成長を支援する機会」として捉え、心のケアを含めた総合的なサポート体制の構築を目指しましょう。
参照:令和6年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概要【厚生労働省】
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