【業務リスト付き】企業で働く産業保健師の役割や仕事内容を紹介します
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健康診断や労働者からよせられるお悩み相談など、社内の健康管理対応でお困りの企業ご担当者は多いのではないでしょうか。
そんな時、頼りになるのが産業保健師です。
今回は、産業保健師が企業内でどのような役割を果たしているのか、どのように働いてもらえるのかなどを、具体的な例と共にご紹介します。
なお、記事中でご紹介する産業保健師の基本的な業務をまとめた業務リストをページの最後からダウンロード頂けます。ぜひご活用ください。
保健師とは?
皆さんは保健師という職業についてどのくらいご存じでしょうか?
産業保健師についてご紹介する前に、まずは保健師について少しご紹介しておきます。
保健師は、保健師助産師看護師法において、「厚生労働大臣の免許を受けて、保健師の名称を用いて、保健指導に従事することを業とする者」とされる国家資格です。
保健師は、乳幼児から高齢者、健康な人まで、病気や障害を抱えるすべての人を対象とし、健康の保持・増進、疾病の予防のため活動を展開していきます。
保健師の詳細な役割は以下の通りとなります。
- 健康診断の実施や保健指導
- 健康教育や健康相談
- 集団の育成や活性化
保健師には、対象者が抱える健康問題の背景にある要因を探索し、根本的な解決を図っていくことが求められます。そして、主役は対象者であり、保健師は後方支援として対象者にその活動を展開していきます。
保健師になるためには
保健師になるためには、まず、四年制大学や短期大学、専門学校などで看護師の資格を取得します。
その後のルートは卒業校によって様々ですが、大学や保健師養成所などでは地域看護学や公衆衛生学等を学び、保健師国家試験に合格することで保健師資格を取得できます。
保健師はどこで働いているの?
保健師は全国に55,595人(令和2年年末時点)います。
保健師は、自治体(保健所・市区町村など)、病院・診療所、産業保健(事業所)など、学校保健を含む様々な場所で働いていますが、その多く(約40,000人)は自治体に勤務しています。
一方、産業保健(事業所)で勤務している保健師は約3,700人のみで、約40,000人も働いている自治体と比較すると、とても少ない人数であるという事が分かると思います。
産業保健師について
ここ数年、産業保健師の需要は増加しています。
その背景としては、国が高齢化社会や生活習慣病、メンタルヘルスの問題に対応するため、予防医学を重要視しており、予防医学を支える役割の一部を担う産業保健師が注目されているのです。
産業保健師とは
産業保健師とは、健康診断や保健指導、健康相談など、労働者の健康管理に関する業務を行う保健師のことです。
組織や労働者の健康課題を見つけ、健康で高い生産性を維持し、長く就業してもらえるように産業医や関係各所と連携を図り、支援を行うことが産業保健師の主な役割となります。
産業保健師の就業先について
産業保健師の就業先には、どのようなものがあるのでしょうか?
産業保健師の就業先は、大きく二つに分けることができます。
- 企業に所属する場合
- 健康保険組合に所属する場合
産業保健師が企業に所属する場合
企業に所属する産業保健師は、主に人事部や総務部などの間接部門に配属されます。(大企業は健康管理部門の部署を設置している場合もあり)
産業保健師が人事部や総務部へ配属される理由は、産業保健師の業務は間接部門との連携が必須であるためです。
他には、産業保健師が企業を訪問し、産業保健サービスを展開するケースもあります。
その場合、企業側は、
- 産業保健師の派遣会社と契約しサービス提供を受ける
- フリーランスで活動している産業保健師と直接契約を交わしサービスの提供を受ける
という二つの方法があります。
企業が産業保健サービスを利用する具体例
ここで、企業が産業保健サービスを利用するいくつかの具体的な例をみてみましょう。
【例1】
- 肥満者が多いので、減量へのきっかけづくりとして健康教育を実施して欲しい!
→約2時間で、食事や運動の健康教育を産業保健師に実施してもらおう!
【例2】
- 健康診断にまつわる作業が大変!事後措置って何をすればいいの?
→週1回4時間ほど、産業保健師に訪問してもらい、健康診断の結果確認や事後措置の対応などを依頼しよう!
【例3】
- 高所作業での転倒・転落が発生した!注意喚起と併せて、安全衛生委員会で、産業保健師の立場から、情報提供をしてもらいたい!
→安全に作業をするため、日々のセルフケアについて話をしてもらい、職場巡視も一緒に同行してもらおう!
いかがでしょう。労働者や組織のため、産業保健師による産業保健サービスをどのように活用すればいいのか、少しご理解いただけましたでしょうか。
いずれにせよ、自社の健康課題やニーズを把握し、産業保健師をどう生かすのかについて検討していくことが重要です。
企業で産業保健師をどのように配置するのか?
産業保健師の配置人数について、一般的に労働者約500名~600名に対し、産業保健師一人を配置することが望ましいと言われています。
理由は、産業保健サービスの質を維持しやすいためですが、実際の配置は企業によりさまざまです。
ここで、企業の産業保健師の配置例を確認する前に、産業保健師の雇用形態について確認してみましょう。産業保健師の雇用形態は、以下の通りです。
- 正社員
- 契約社員、嘱託社員、派遣社員
- 業務委託契約など
最近は、フリーランスの産業保健師も増えてきており、直接企業と契約をして産業保健サービスを提供するケースもあります。
では、産業保健師の配置の例をみてみましょう。
【企業A】
労働者数:約5000人
50人以上の事業所の数:5拠点あり(札幌、東京、神奈川、名古屋、大阪)
→50人以上の事業所5拠点に各1名(産業保健師を正社員3名、契約社員2名)配置。休職者が多いため、疾病の予防、復職支援などの業務を依頼する。
【企業B】
労働者数:約1000人
50人以上の事業所の数:なし(本社 東京)
→本社の東京に産業保健師を正社員1名、派遣社員1名で配置。肥満者が多いため、主に特定保健指導やメタボ対策の業務を依頼する。
【企業C】
労働者数:約100人
50人以上の事業所の数:なし (本社 神奈川)
→本社の神奈川に週1回 4時間 保健師サービス提供会社による配置。主に定期健康診断の事後措置対応について、産業医との連携や調整役として業務を依頼する。
いかがでしたでしょうか。企業により、産業保健師へ依頼する業務、配置についても様々あることがご理解いただけたのではないでしょうか。
産業保健師を配置することにより、企業や労働者にとって必ずプラスの効果がありますので、自社の健康課題や労働者の声を聞いた上で、進めていくことが重要です。
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産業保健師の業務内容
以下は、産業保健師の一般的な業務内容です。
一般的な産業保健師の業務 | ||
項目 | 備考 | |
1 | 健康診断(事後措置対応、保健指導) | 受診勧奨など |
2 | 長時間労働者への面談 | 面談(受診勧奨、職場連携、場合によっては産業医面談の調整) |
3 | ストレスチェック(実施、結果確認、面談対応) | 実施者もしくは共同実施者の場合:結果確認、面接指導調整や準備、集団分析など |
4 | 就業制限管理者フォロー | 定期保健師面談、産業医面談調整など |
5 | 休職者対応 | 休職前・休職中・復職時のサポート |
6 | 上記以外の労働者の健康相談 | 保健師面談、産業医面談調整 |
7 | 安全衛生委員会参加 | 健康情報提供、健診やストレスチェック結果の報告など |
8 | 職場巡視(産業医巡視の帯同、衛生管理者巡視の帯同等) | |
9 | 健康教育、労働者の健康の保持増進のための措置 | 衛生講話、階層別教育、集団教育など |
10 | 労働者の健康障害の原因の調査、再発防止のための措置 | |
11 | 労働安全衛生計画の支援 | メンタルヘルス、過重労働、治療と就業、生活習慣病など |
※EXCELファイルを記事下部よりダウンロード頂けます
産業保健師の雇用形態、企業の健康課題、配属されている部署などにより、求められる業務内容は異なります。
しかしながら、保健師は国家資格であり、専門職です。そのため、産業保健師に依頼する業務内容については、専門職にしかできない業務を依頼することを念頭において考えておくとよいでしょう。
産業保健師に求められるスキル
産業保健師に求められるスキルはさまざまありますが、専門的な知識やスキルを持っていることは大前提です。その上で3つのポイントを上げました。
1. 問題解決能力
産業保健師は、問題解決を図る際に個々へのアプローチだけでなく、組織の体制づくりについて提案していく場面が出てきます。そのため、問題の本質を見極め、論理的にわかりやすく伝える力、状況の変化をすばやくとらえ適応できる力、継続していく力などが重要となります。これらの力を合わせて、問題解決を図っていくことが必要です。
2.企業人としてのバランス感覚
産業保健師は専門職ですが、その前に企業人でもあります。そのため、企業の経営や組織を把握し、専門職として企業に貢献しているという事を常に心がけることが必要となります。
3. コミュニケーション能力や調整力
コミュニケーション能力や調整力は産業保健師の必須スキルです。相手は人であるため、業務の大半は調整に費やしていると言えるでしょう。相手の本質を見極め、どうすればよりよくなるのかという事に焦点を当てて、会話を展開していくことが必要となります。
産業保健師の1日のスケジュール
産業保健師の1日のスケジュールについて、A保健師の実例を見てみましょう。
朝礼にてその日のスケジュールを確認した後、メール確認や返信対応をします。最近では、労働者からのメールでの相談や問い合わせなどもありますので、メールの確認はとても重要です。
以前は対面での面談が主流でしたが、新型コロナウィルスの感染流行により、WEB面談の実施も増加しています。そのため、遠隔に就業している方との面談も現地に行かずとも、表情を見て面談を実施する事が可能となっています。
面談後は、面談記録などの作業を行います。また、必要時に所属長との連携を行い、労働者のサポート体制の基盤を構築します。
産業医執務時間は、産業医面談の調整やサポートはもちろんのこと、産業保健師が判断できない事案、対応に困った事案などを相談、助言をもらい、対応を進めていきます。
これは、ほんの一例にすぎませんが、産業保健師の仕事は、1日で完結する、すぐに結果が出るという業務はほとんどなく、日々の地道な活動が中長期的に大きな結果、例えば、労働者の健康行動への動機づけや組織の活性化などに結び付きます。
今後、産業保健師に期待されること
生産性の高い人材が長く健康で就業できるように、産業保健師に期待されていることは何でしょうか。一番重要なのは、変革を起こす力であると考えます。
労働者の声が経営層に届くよう、専門職でもあり、企業人でもあることを忘れず、健康や安全に前向きな企業風土となるようさまざまな人と連携を図っていくことが期待されています。
本記事監修:産業保健師 辻 梨恵子(ペンネーム)
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